アサギマダラを呼ぶ取り組み@生駒鹿ノ台農園

皆さん、こんにちは!マイファームスタッフの工藤です。 今回は奈良県にある生駒鹿ノ台農園の生物多様性に関わるユニークな取り組みをご紹介します。
生駒鹿ノ台農園では、2018年4月から準絶滅危惧種に指定されている植物フジバカマを栽培し、「旅をする蝶」として知られるアサギマダラが集まる環境づくりを行っています。また農園内には、古代米を育てる水田もあり環境も多様な農園です。私も福岡から1度見学にお邪魔しましたが、松本さんと平井さんは野菜や微生物のことにもお詳しく、お話がとても面白く楽しい時を過ごさせてもらいました。農だけでなく自然がお好きな方にオススメな農園だと思います。
(生駒鹿ノ台農園で育てられているフジバカマ)
(園内には水田もあります)
・希少な植物、フジバカマとは?
秋の七草のひとつ、「フジバカマ」。日本では古くよりその香りや効能を生活の中でさまざまに活用 してきました。乾燥させて匂い袋にしたり、薬草として熱を下げたり利尿作用を期待したりとても身近な植物だったようです。
一説では、中国や朝鮮半島を原産とするとも、日本にもともと自生していたともされています。しかし現在では、本来の生息地である河川敷が改修工事により減少し、環境省では準絶滅危惧種に指定されるほど数を減らしています。(1)
・フジバカマとアサギマダラの関係
フジバカマを語るうえで欠かせないのが、「旅をする蝶」として知られるアサギマダラの存在です。春に南から北へ、秋に北から南へと、世代を超えた長距離移動を繰り返す、不思議な生態を持つ蝶です。移動距離は、最長で2500キロメートルともいわれています。まだその渡りの理由は解明されていない部分も多く、愛好家を魅了しています。(このあたりは別の記事でご説明します!)
旅の途中、アサギマダラはフジバカマやヒヨドリバナ、スナビキソウといった植物の蜜を特に好んで吸います。これらの植物に含まれるアルカロイド系の物質が、オスのフェロモン生成に必要とされているからだそうです。また、オスのやる気を活性化する別の成分がこれらの植物に含まれていることも分かっています。(2) アサギマダラは、フジバカマなどの特定植物の蜜を吸わないと交尾行動に移らないんだとか!
まさに助け合いで生きているアサギマダラとフジバカマなのです。 アサギマダラの幼虫が育つのはキジョランという別の植物なのですが、フジバカマはこのように蝶の旅の途中の「なくてはならない立ち寄りスポット」としての重要な役割を果たしています。美しいアサギマダラがフジバカマに集まる光景は、農園を訪れる人々にとっても心に残るひとときになるでしょう。
・アサギマダラの謎を解き明かすのはあなたかも?
さて、ここまではフジバカマとアサギマダラの関係を紹介しましたが、移動の経路や理由など未だに解明されていない事も多くあります。 自然の秘密を解き明かすのは、なにも研究者の専売特許ではありません。アマチュア愛好家が熱心に取り組み、研究成果をあげた事例は数多くあります。アサギマダラの移動に関する研究も多くの愛好家が解き明かそうとしている研究のひとつです。
ではどうやって移動経路を調べているのでしょうか?GPSを取り付ければいいのでは?と思う方も多いでしょう。たしかに大きなカブトムシや飛翔能力のあるハチなどにGPSを取り付け調べた研究はありますが、アサギマダラは体重が1g以下であるためGPSの重さに耐えられません。 そこで、「マーキング」という方法で調査が行われますが、これには全国津々浦々にこの調査に興味のある人がいる事が何よりも大事になります。捕獲したアサギマダラの羽に日付や場所などのデータを書き込み、それを放蝶して移動した先でまた愛好家が捕獲することで、どこから飛んできた個体か調べる事ができるというものです。ただし、アサギマダラの捕獲が禁止されている地域や、フジバカマを保全している場所、勝手に他人の土地で調査するとトラブルに発展する可能性もありますので、十分注意してください。 詳しい調査方法や、再捕獲情報は「アサギマダラの会」のサイトをご覧下さい。掲示板やFacebookで各地の愛好家が情報交換を行っています。
(北九州市響灘ビオトープで採集されたアサギマダラの羽。残念ながら羽だけが落ちていたとのこと)
・アサギマダラを捕まえる裏技
さて、近くにフジバカマやヒヨドリバナが咲いていればそこで待ち伏せすることも出来ますが、空高く飛んでいるアサギマダラを捕まえる裏技をご紹介します。それは白いタオルを回すこと。遠くにいるアサギマダラに向かって白いタオルを早く回すと遠くにいる個体が気づいて寄ってきます!ちょっとやってみたくなりませんか? アサギマダラのマーキング調査は、専門知識がなくても誰でも参加できるのが魅力です。各地でマーキング調査会や体験イベントなども実施されていますので、まずはそこへ参加してみるのもよいでしょう。自分がマーキングしたアサギマダラが、何百キロも離れた地で再発見されるといったロマンあふれる瞬間や、アサギマダラを通してそこから見ず知らずの人と関わり合えるのも、この調査の楽しみのひとつです。
生物多様性の取り組みとして、マイファームとしてもいずれマーキング体験会を実施したいなと思っています。生駒鹿ノ台農園の他にもフジバカマを保護する活動がはじまれば、どちらも立ち寄ったアサギマダラもそのうち見つかるかもしれませんね! フジバカマの香りや、アサギマダラの舞う姿に心惹かれたなら、ぜひ生駒鹿ノ台農園で農ある暮らしをはじめませんか?アサギマダラが感じる香りを体感し、自然の不思議に触れることで、新たな視点が広がるかもしれません。そしてマーキングされたアサギマダラを見つけるのはあなたかも!?
- 服部,保 田村,和也 小舘,誓治. “フジバカマ生育地の現状と保全”. ランドスケープ研究. 2000. https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010611015.pdf
- Keiichi Honda, et al. “Uptake of plant-derived specific alkaloids allows males of a butterfly to copulate”. Scientific Reports (2018) vol. 8, article number:5516. https://www.nature.com/articles/s41598-018-23917-y