農天気代表 小野淳さんの『農』天気ブログ
JAの青壮年部がつくっている「食育カレンダー」がすごい

毎月、東京都港区の赤坂にある「東京農村」というビルで「東京農サロン」という勉強会を開催しています。
東京農業に関する様々なテーマでゲストスピーカーに語っていただき、あとは交流がてらワイワイと情報交換などします。
専門性の高いテーマなどについても濃厚に語り合いますので基本的には農家、食農関連企業、メディアなどの人々に直接お声がけをして参加者を募るという方式ですが
毎回20~30名の参加者で会場は熱気に包まれます。

つい先日(5月15日)「東京のJAと青年組織」というテーマで開催したのですが、これまた濃厚でとても面白い話を聞くことができました。
ゲストスピーカーにはJA東京中央会から五十嵐匠さん
そして都内各JAの青壮年部の代表としてJA東京青壮年組織協議会 委員長 須藤金一さんにお越しいただきました。
まずは見てもらいたいのがこちら。

小学生の絵を集めて作った「食育カレンダー」ですが
このカレンダー、例えば5月を見てみると日付のところに
「5/1 レタス収穫」
「5/9オクラ種まき」
「5/19ゴーヤ植え付け」
というように基本野菜の栽培のタイミングがすべて書き込まれていて家庭菜園をやっている人にとっても便利にできています。
この食育カレンダーは三鷹市の農業後継者たちが企画実施し、2007年から10年以上継続されていて三鷹市内小学生から600点以上の応募があるということで地域に完全に定着しているのです。
さらに市内の学校給食でも地場野菜の提供や農家による出張授業も行われていて、子供たちと農家の距離がとても近くなっています。

農家自身がここまで積極的に地域の子どもたちと関わっている例を私はほかに知りません。
子どもたちにとっては「自分の絵がカレンダーになって市内各地で飾られるかもしれない」という期待もあるでしょうが、600人以上の小学生が毎年農業について絵にすることで、市内の農業に関わっているのです。また、子どもたちが農体験をこれだけ楽しんでいるということがストレートに伝わってくるので、大人たちも改めて「農のあるまち」の価値を感じるでしょう。
委員長の須藤金一さんはこの食育カレンダーを作っているはJA東京むさし三鷹地区青壮年部の部員でもあります。
「三鷹市の農業は住宅地のなかにあって、市民によって買い支えられています。でもどんな野菜が地元にあるのか全然知らない人も多い。知ってもらう努力は欠かせないんです」と語ります。食育カレンダーは農家と市民の大きな接点となっているのです。

東京農サロン懇親会、中央が須藤金一さん
そもそもJAとは「農業協同組合」の愛称ですが、正組合員と準組合員を併せると約1000万人が所属している巨大組織です。JAバンクは個人取扱高がゆうちょ銀行に次いで多く(メガバンクよりも大きいんです)、東京都の預金高のみで3.6兆円を保持しています。
部外者にとっては大きすぎととらえどころがなく、「農家に代わって農産物を販売」「政治活動も盛ん」といったイメージが強いかもしれません。
組織自体は巨大ですが、各地域のJAは特色がそれぞれあって、独自の取り組みがこれからますます求められているといいます。
須藤さんたちの取り組みを筆頭に、こうした三鷹市のような熱い取り組みが各地域でさまざまなアイデアとして出てくると日本の農業も大きく変わるでしょう。
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文・写真 小野淳
㈱農天気 代表取締役 農夫
NPO法人 くにたち農園の会 理事長
東京・国立市を拠点に幅広く農体験を提供
「都市農業必携ガイド」(農文協)
監修・実演「菜園ライフ~本当によくわかる野菜づくり」(NHKエンタープライズ)
